スギケンの闇鍋風ドールブログ

ドールの話をメインに、カメラ、漫画、イラスト、アニメ、映画など、ある方面に偏った趣味を闇鍋風に送る不定期日記です。                

ビクトル・エリセ ブルーレイ ツインパック

ビクトル・エリセ

ミツバチのささやき、エル・スールの2作品を収めた
ブルーレイ ツインパックを購入しました。

画家の成瀬政博氏を起用した特製ケースに入っていますが、
中は単品販売しているものと同じです。

開封後、撮影し忘れたことに気付いて慌てて撮ったので見た目は悪いですが、
そこはスルーの方向で……。

エル・スールは未見なので、ミツバチのささやきだけでもよかったのですが、
色々と調べたら自分が好みそうな作品であることが分かり、
世間の評判もよかったので、思い切ってツインパックにしました。
(値引きされたツインパックは、単品で買うよりも単価が安いですし)

このミツバチのささやき。知る人ぞ知る名作なのですが、
私が観たのは、つい最近のことです。
とても印象に残る映画でした。
台詞や説明を極力省き、雰囲気や俳優の表情で表現しているので、
明確ではない点もあります。
解釈は人それぞれですが、私がこの映画に感じたテーマは、
ズバリ、「善悪とはなにか」。

未見の方が知っても問題ないと思える話なので、
ネタバレ込みであらすじを書きます。

時代は1940頃。
カスティーリャのある村での出来事です。
主人公のアナは4人家族。
父は養蜂業を営む気難しい人物で、
母は過去の恋人のことが忘れられず、
存命かも分からない相手に手紙ばかり書いています。
一人いる姉と遊ぶのがアナの日常。
家は比較的裕福で、二人の使用人がいます。

ある日、姉と二人で「フランケンシュタイン」を観に行ったアナは、
怪物が少女を殺すシーン。そして怪物が殺されるシーンに疑問を抱き、
姉のイサベルに死んだ理由を尋ねます。
イサベルは回答を先送りしましたが、就寝前に再び尋ねてきたアナに、
「本当は知らないのね。嘘つき」と言われ、反発心から嘘をつきます。
「怪物もあの子も殺されていない。
映画の中の出来事は全部嘘で、
私はあの怪物を村はずれで見た。
怪物は精霊で、会話するには友達にならなければいけない」と。

翌日、信じ込んだ妹を誘ったイサベルは、
怪物を見たという村はずれの廃屋に向かいました。
そこには誰もいませんでしたが、精霊の存在を気にするアナは、
諦めきれません。次の日から一人で廃屋に通うようになります。
探索するうちに、アナは廃屋の外で大きな大人の足跡を発見しました。
怪物のものかもしれないと思ったアナは、
自分の小さな足を恐る恐る重ねます。

休日。
姉妹を連れて森へ向かった父は、
食用キノコと毒キノコの見分け方を二人に教えました。
そして、善いものと悪いもの。
それを注意深く見極めなければならないと念を押します。

休日が終わると、出張で父が暫く家を空けることになりました。
母は子育てよりも、元恋人へ手紙を書くことに熱心です。
嘘を信じて廃屋に通う妹に気付いたイサベルは嘲笑し、
さらなる悪戯を決行します。
姉妹以外誰もいない家の中で突然悲鳴を上げ、
植木が散乱する床の上で死んだふりをしました。
思惑通り、アナはイサベルが怪物に襲われたと思い込みます。

「本当は嘘なんでしょう」
「……もう、あの人は行っちゃったから大丈夫だよ」

心配するアナが声をかけても、体を揺すっても、
イサベルは無視し続けます。
慌てたアナは助けを求めて家中を走り回りますが、
家の中には誰もいません。
困り果て、散乱する部屋に戻ってくると、
隠れていたイサベルが革手袋をはめた手でアナの口を塞ぎます。
驚いて飛びのくアナを見たイサベルは満足して笑いました。

傷ついたアナは、他の友達と楽しく遊ぶ姉の姿を
離れて見つめます。
夕食の時間になっても、使用人に呼びかけられるまで、
焚火のそばに座り込んでいました。

それでも精霊の存在を信じるアナは深夜に家を抜け出し、
廃屋へ向かいます。
戻ったアナに気付いたイサベルが、
「どこに行っていたの?」と問いかけますが、
口を利かずに、アナは眠りました。

廃屋通いを続けるアナの日々に変化が訪れました。
列車から飛び降りた逃亡兵が、廃屋に身を潜めていたのです。
足を怪我した逃亡兵を見たアナは、
カバンに入れていたリンゴを差し出しました。
空腹だったのか、かぶりつく逃亡兵。

それを期に、逃亡兵とアナは仲良くなりました。
アナは父のコートと食糧を与え、
コートのポケットに入っていた懐中時計を使い、
逃亡兵は手品を披露します。
微笑むアナは、怪我のせいで苦戦している逃亡兵の代わりに、
靴紐も結んであげました。

その夜、大人に見つかった逃亡兵は廃屋で撃たれ、
殺されてしまいました。
逃亡兵が身に着けていたコートから、アナの父に容疑が
かかりますが、父は否定し、難を逃れます。
家族の誰かが加担していると考えた父は、
夕食の場で懐中時計のオルゴールを鳴らし、
アナの反応だけがおかしいことを見逃しませんでした。

懐中時計が戻っていることを不思議に思ったアナは、
急いで廃屋へ向かいます。
アナは残されている血痕から兵士が死んだことを知りました。
待ち伏せていた父が、厳しい口調で、「来なさい!」と
声をかけます。
アナは父に背を向け、走り去りました。

心に深い傷を負ったアナは夜の森を一人で彷徨います。
彷徨うアナの足元に、以前父が教えてくれた毒キノコが生えていました。
手を伸ばすアナ。

アナが姿を消すことによって自分の不徳を恥じた母は、
手持ちの手紙を焚火で燃やし、家族と向き合うことを決意しました。

途方に暮れ、川辺に座り込むアナの前に、
怪物の姿をした精霊が現れます。
まっすぐにその顔を見上げるアナでしたが、
怪物が近づくにつれて、口元がガクガクと震えます。
そしてアナは、ゆっくりと目を閉じました。

翌朝、平原で横たわるアナを捜索隊が発見しました。
アナは弱っており、家に戻ってからも眠らず、食べず、
口もききません。光を嫌がり、家族を見ても分からないようです。

家族が寝静まった頃、アナは起きだし、ドアをそっと開きました。
目を閉じ、精霊に呼びかけます。
「私は、アナです」

FIN


少しでも魅力が伝わるように細かく書きました。
多くの方が冗長に感じたと思いますが、
自己満足が通用する個人ブログですので、
ご容赦ください。

この映画の魅力の半分は、5歳で主役を務めた、
アナ・トレントによる影響が大きいと思います。

この子を発掘せずして、ビクトル・エリセが描きたかった世界は
表現できなかったのではないかと個人的には思っています。
そのくらい、ミツバチのささやきにマッチした子役。
多くを語らずとも、彼女の純真を思わせる大きく可愛らしい瞳を
見ているだけで、伝わるものがあります。

そしてエリセ監督自身も抜群のセンスの持ち主。
陰影の使い方やカメラアングルが秀逸で、
ストーリーの構成にも無駄がありません。
最近主流のテンポの速い映画と比べたら、比較にならないほどに
静かでゆったりとした映画なのですが、退屈と思える部分は
ひとつもありませんでしたし、不思議と何度も見たくなります。

冒頭にも書いたように、台詞や説明を極力省き、
雰囲気や俳優の表情で表現しているので、
明確ではない点もあるのですが、私はこの映画を見る度に、
善悪を見極める目を持っているか、と
監督に問われているような気分になります。

キノコの見極めを父が娘達に教えるシーン。
個人的には、あそこに監督が言いたいことが
詰まっているような気がします。

普段、何気についている嘘という行為はどうなのか。
人は騙された人間を面白がる傾向にあるが、
それは正しい反応なのか。
家庭を顧みず、自分の欲求にばかり忠実な行為はどうなのか。
人殺しに抵抗を感じて逃亡をはかる行為は悪なのか。
負傷した逃亡兵を善意で助けたアナを父は「悪」として叱ろうとするが、
本当にアナの行為は悪なのか。

アナ自身も夜の森で毒キノコを見つめ、
必至に善悪を見極めようとしていたように思えます。

そして川辺に現れた怪物。実際に存在するはずがないので、
逃走中に疲れて眠り込んだアナが見た夢だと私は解釈しています。
夢の中で怪物に会ったアナが唇を震わせ、
恐怖に怯えながらも、怪物は善なのか、それとも悪なのかを、
自問していたのではないかと。

幼いアナは、最後まで姉の嘘を信じ、
純粋に物事と向き合い、
真っすぐな眼差しで世界を見つめました。
個人的には、その姿に胸を打たれた映画です。

最後に……、

HDリマスター版のDVDがレンタルショップに置いてあったので、
ブルーレイとの画質差が気になり、借りて比較してみました。
興味のある方は参考にどうぞ。
(クリックすると、別枠で大きな画像が見れます。1920×1200pixel)

〇企業ロゴ

・DVD
ミツバチのささやき01

・BD
ミツバチのささやき02

〇タイトル画面

・DVD
ミツバチのささやき03

・BD
ミツバチのささやき04

〇映画が最大の娯楽だった時代。

・DVD
ミツバチのささやき05

・BD
ミツバチのささやき06

〇生きているかも分からない元恋人への手紙に没頭する母の手。

・DVD
ミツバチのささやき07

・BD
ミツバチのささやき08

〇映画館にて。怪物と少女のやり取りにハッとするアナ。

・DVD
ミツバチのささやき09

・BD
ミツバチのささやき10

〇授業中、先生に指されてしまったアナ。

・DVD
ミツバチのささやき19

・BD
ミツバチのささやき20

〇構図とか光の使い方とか、「最高かよ」と思ったシーン。

・DVD
ミツバチのささやき11

・BD
ミツバチのささやき12

〇印象的な列車のシーン

・DVD
ミツバチのささやき13

・BD
ミツバチのささやき14

〇脳裏に焼き付くほどの可愛らしさを持つアナ・トレント。

・DVD
ミツバチのささやき15

・BD
ミツバチのささやき16

〇逃亡兵にリンゴを差し出す優しいアナ。

・DVD
ミツバチのささやき17

・BD
ミツバチのささやき18


監督が監修したHDリマスターを使用してるので、
とにかく色味が自然です。フィルムグレインは強く出ていますが、
かなり古い作品ですし、こんなものかと。
時代背景を考えると、綺麗すぎるのも不自然ですし、
このくらいの粒子感は、却って味になっていると個人的には思います。

ただ、フィルムグレインのせいで同時に発売されたDVDとBDの
画質差はほとんど感じられません。
データ量でいえば、5倍程度の差があるので、
解像度に大きな開きがあるのは間違いないのですが、
単品買いなら、どちらを選んでもいいレベルだと思います。

 映画

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